2020年10月19日

【子ども育ちレスキューネットシンポジウム報告】 ③

パネルディスカッション 前半
「子ども・若者、保護者の味方!地域支援を繋ぐために」
(当日説明できなかった部分を含めて)

特定非営利活動法人ドリーム・フィールド代表 大山浩司
「困難に直面した子どもや保護者をミスリードする
15の情報」

① 「発達障がいの診断を受けたら『支援級』に移ればいい」
「普通級」「支援級」どちらもメリット、デメリットがある。
子どもの特性の理解は非常に重要だが
「支援級」に移って失うことも少なからずある。

家庭生活で困ることがないのに、
学校生活で先生が困るからと
すぐに「支援級」に移るのは性急。

クラスでの周囲との関係性、WISC結果の詳細、本人の意思
普通高校進学の意向と可能性など、
さまざまな条件を考え慎重に決める。

② 「支援級に入れば学力が上がる」
支援級では少人数で丁寧に勉強を見てもらえるはず。
学習内容も易しくなり範囲も限られるので、
当然良い点を取れるようになるだろう。

しかしそれはあくまでも支援級独自の評価。
普通級における評価とは違うし、
市町村によっては内申点にはならない。

中学校卒業後の目標をどこに持っていくかによって
その考え方は全く違うが、
全日制普通高校への進学を念頭に置いている場合は
「支援級としての評価」または「内申点ゼロ」ということを
見落としてはいけない。
受験をする高校側も(気付かない場合を除いて)
「支援級での評価」と「普通級での評価」を
同等に扱うことはない。

③「支援級からも普通級と同じように進学できる」
もちろん進学はできる。
しかし、前述した通り
「支援級での評価」と「普通級での評価」は別物。
そのため、支援級から全日制普通高校への進学は
一般的に非常に難しいのが現状。

支援級からの進学先は
私立・公立通信制高校、単位制高校
(通信高校と提携した)専門学校
特別支援学校高等部
などと限定されてしまう。
もちろんそれらの学校も間違った選択肢ではないし、
積極的にその道を選ぶのもOKだが、
高校の選択肢が減るであろうことは否定できない。

④ 「発達障がいがあると進学が難しい」
最近は少子化で、どこの学校も生徒集めに必死。
逆に言えば「頑張ります」と言えば
必ずどこかには入れると言っても過言ではない時代。

私立通信制高校、単位制高校は全国展開で
各地にたくさんできている。

アニメやゲーム等を学べると、
子どもたちが興味を持つものを看板に掲げ宣伝。
「今なら安く入れる」
「早くしないと定員が」などと、
不安な親や本人の焦る気持ちを利用する傾向も。

検討段階なのに学校案内に振込用紙を同封する学校、
わざわざ複数種類の制服を買わせる学校もある。

このように「不登校」「発達障がい」は
大きな“市場”となっているのだ。
逆に言えば子どもたちは「引く手あまた」なので
むしろ、焦らず慌てずこちらが選べばよい。

⑤ 「進学できれば安心」
通信高校や専門学校、普通高校に入っても
中退してしまう子はたくさんいる。
卒業後に引きこもってしまっている人も数知れずいる。

中学校側は「進学」が、高校側は「高卒単位」が
“成果”や“実績”となるのは当然のこと。

そのため、特に私立高校では
テストに合格できるように
出席日数を上手く補えるように
いろいろな方法を使って単位を取りやすくする。

もちろん「悪」というわけではないが、
大切なことを見落とすこともしばしばある。

それは、子どもの“人生”。
進学できることはマイナスではない。
高卒単位は、ないよりもあった方が便利な時もある。
しかしそれ以上に大切なのは、子ども一人ひとりが
幸福感と自己肯定感を持っていきてゆけること。
そのためには、学業よりもむしろ
ソーシャルスキルを身につけることの方が
大切であったりもするのだ。

⑥ 「いざとなれば特別支援学校高等部に入ればいい」
支援級に移って高校進学に行き詰まったとしても
療育手帳がないと特別支援学校高等部には進めない。

そのため、IQが高めの子どもでも
手帳を取得するために、IQを低く診断してもらおうと
検査前夜に子どもに徹夜させるという
必死の“努力”をするご家庭もあると聞く。

しかしそうやって入った特別支援学校高等部は
“高校”ではない。
高卒資格を取得できる学校ではなく訓練校。
それを理解した上で入学するならば何も問題ない。

⑦ 「支援級に移れば高校進学しやすい」
「目標をどこに定めるのか」
「本人の学力が伸びる可能性はどうか」
「支援級、普通級どちらが楽しく過ごせるのか」
という観点で判断すべきだろう。

単位制高校、通信制高校、専門学校を望むなら
支援級でゆっくり丁寧に教えてもらうのもOK

本人も保護者も全日制普通高校を望み
学力的に可能性があるなら、
普通級に在籍したままで
塾や家庭教師による発達の特徴を理解した
個別の適切なサポートによって
学習面を補う方が選択肢としては賢明。

しかし、
普通級で過ごすのが辛かったり、
いじめがあって先生がそれを解決できないならば、
普通級で無理せず支援級に移る方が良いかも。

とは言え深刻な問題は、
高校の先生方の発達障がいへの理解や取り組みが
非常に遅れているという現実。

そのため入試の際に
「支援級在籍の子」と
峻別されてしまう可能性も低くはない。

支援級は、
今はまだinclusionではなくseparationなのだ。

⑧ 「教師に任せれば大丈夫」
以下は自分自身が20年高校教師として勤めた間に学んだ
自分自身に対する反省でもある。

もちろん教師は誰もが志を持って教師になっている。
ですから、教師が子どものことを
良心的に考えてくれているのは当然。

しかし、残念なことに
教師は相対的に視野が狭い職業であることも確か。
なぜなら教師は、小中高大学そして教師と
幼少から「学校」の世界でしか生きていないのだ。
「井の中の蛙」となることも少なくない。

ですから、
学校の論理=正義と考えてしまうのも不思議ではない。
学校における“異様な校則”はわかりやすい例だろう。
一般社会から見れば「?」という校則であっても
学校の教師には大義名分や正当性があり、
客観的な疑問を指し挟む余地はないのだ。

さらに問題なのは、
発達障がいに対する理解もスキルも持たない教師にとって
WISCで発達障がいの診断を受けた子は「普通ではない子」。
対応が難しくて当たり前、手に負えないと
安易に考え排除してしまう傾向にあること。
支援級への移行の勧めに
「峻別」「排除」の意味合いが込めれる場合もある。

また、教師が思い込みやすい誤った思い込みとして
できたのは教師のおかげ
できないのは子どもや親のせい
というものがあります。
教師はついつい傲慢になってしまいがちなもの。

こう考えてしまう教師は、
子どもたちから学ぶことをしない。
成長できないのだ。

しかも卒業後に教師は支えてくれない。
教師のサポートは有期で一時的なものに過ぎない。

自分も教師だったので、
熱心な良い教師もたくさん知っている。
しかし
「学校の先生に任せれば大丈夫」と決めつけないで
親や家庭としての意見を
しっかりと投げかけることも大切。
「モンスターペアレンツ」
という決めつけを恐れず、
親や大人が、子どものために
教師に反対意見を述べたり、
時には闘う場面も必要。

⑨ 「診断を受けた子は特別」
誰もがみんな個性も特徴もある存在。
発達障がいの特徴は誰もが少なからず持っている。
誰もがみんな「障がい者」なのだ。

そして、眼の前にいる子どもは
診断前も後も何も変わりません。
診断名が付いても付かなくても
以前から近くにいる大切な子ども。

では診断は何のためにあるのか?
それは、その子の苦手な部分を理解するため。
生きづらさを感じることがないようにそれを補うため。
その子なりの困難の“すり抜け方”を身に付けるため。
“特別”として峻別し排除するためであってはならない。

⑩ 「不登校だと高校進学できない/入学手続は急いで」
前述した通り、今は少子化の時代。
特に単位制高校や通信制高校、専門学校などは
生徒募集に必死。
生徒が集まらずに潰れる専門学校もあるくらい。

だから、中学出席日数がゼロでも進学できる学校は
たくさんある。
そもそも、「不登校」「発達障がい」は
大きな“市場”になっているのだから。

通信高校や専門学校は全国各地に林立しており
どこも定員オーバーすることはない。

逆に生徒は奪い合いの状態なので、
生徒確保のため募集時期をどんどん早くしている。
「後で入れなくなると大変ですよ」
「今なら学費が安くなります」
などと煽って生徒を確保しようとする。

以前は「フリースクール」と銘打ったものを併設したり
最近では
放課後等デイサービス事業所を立ち上げて、
中学生のうちから生徒募集に繋げようとする
高校や専門学校もある。
いろいろな方法で生徒確保に躍起になっているのだ。
勤務した某私立高では、以前理事長が
「生徒を1人東大に入れれば我が校は5年安泰」
と先生方にハッパをかけていた。

私立学校は生き残りに必死で、
時には生徒の進学すら
学校存続のために利用することがある。

⑪ 「不登校だと放課後等デイを利用できない」
役所の人の中にも誤解する人はたくさんいる。

厚労省に確認済みですが、
「放課後”等”なので、放課後以外も利用できる」
とのこと。

そもそも
学校に行かなければ支援されないなんていう
理不尽なきまりはどこにもない。

百歩譲ってそんなきまりがあったとしても
杓子定規に考えるのではなく
利用者である子どもたちの立場に立って
隘路をつくってあげることが、
役人や支援者、大人の役割だろう。

解釈そのものも間違っているのに
「決まっているから」ということで
「学校に行けない子は放課後デイを使えません」
などと言い放つ役人がいるとしたら
public servant(公僕)公務員の資格はない。

ちなみに放課後等デイは平日の場合、
放課後からの短時間でも
午前中からの長時間でも、国の補助金は同額。
だからどこの事業所も長時間はやりたがらないのだ。
浜松市内でも、
90ヶ所以上ある放課後等デイ事業所のうち
平日午前中から開所している事業所は
うちともう1か所の2ヶ所のみ。

そのため、日中利用したい不登校生は利用できず
行き場が少ないというのが現実。

⑫ 「学校以外は出席扱いにならない」
フリースクールは15年以上前から
校長裁量によって出席扱いになっている。

一昨年施行された教育機会確保法では、
学校以外の支援施設を積極的に出席扱いとするよう
明記された。
また学校は不登校生やその保護者に、
学校以外の支援施設を積極的に紹介すべきとも
明記されている。
しかしこの法律の内容をいまだに知らない教師も
少なくない。

ちなみにスクールを始めて16年、
不登校の子が学校からフリースクールを紹介された
という例はほぼない。
ほとんどの保護者は、
医療機関、相談支援事業所、口コミなどから
うちにたどり着いている。

また本来なら、子どものフリースクール登校状況を
学校側が進んで把握すべきところを
フリースクールに通っていることを知りながらも
連絡すらしてこない怠慢な学校もある。

理解のある学校と理解のない学校とで格差がある。
それは教師にも
正しい情報がなかなか伝わっていないからだろう。

⑬ 「学校に行くのは子どもの義務」
法的に明記される「義務教育」とは、
子どもが教育を受ける機会をつくる「大人の義務」であり
「学校に行く義務」でも「学校に行かせる義務」でもない。

しかしこれを知らず、子どもに
「義務教育だから子どもは学校に行かなきゃダメ」
「子どもを無理やりでも学校に行かせなきゃダメ」
と考えて、
子どもを鬱や統合失調にまで追い込むケースは少なくない。

⑭ 「不登校・発達障がいは深刻な問題」
学生時代不登校であっても、発達障がいの特徴があっても
社会で活躍する人はいくらでもいる。
個性ある子は昔もいくらでもいた。

「深刻な問題」はそうした子どもたちではなく
子どもたちを追い込む環境であり
子どもたちの生きづらさを理解できない
周りの大人にあるのだ。

学校=同年令のみの特殊な集団=社会ではありえない環境
であるのに、その枠の中に
馴染めない子どもも全員無理やり押し込み
そこで苦しんだ子の多くが
鬱、統合失調などといった二次障害にまで
追い込まれているという現実。
「学校復帰ありき」で考えるのはそろそろやめません?

また、発達検査が容易に受けれるようになった代わりに
発達障がい→指導が大変→支援級へという
安易な峻別・排除が広がっている。

separationではなくinclusionのための工夫と努力を。
誰にも発達障がいの特徴はあるのだから。

⑮ 「いじめに負けるな」
いじめを「力関係」で解決しようとすると
いじめ被害者が後に加害者になるということが
しばしば起こる。
「やり返せばいい」
「強いのが正しい」という考え方になるから。

最良の解決策はいじめを「超える」こと。
いじめから逃げるのは大切な自己防衛。
そして子どもたちを
いじめという下劣な行為から逃がすことが大切。

いじめを止めるのも、いじめのない環境をつくるのも
その責任は大人にある。
しかし大人がそれをせず、「逃げるな」と言うことほど
無責任で残酷なことはない。
【子ども育ちレスキューネットシンポジウム報告】 ③





上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 10人
プロフィール
さっさ
さっさ
フリースクール、ドリーム・フィールドのスタッフです~  得意なことは天然トークと忘れ物です(笑)  キーボードとコーラス、フルートも吹きます。  オーボエを吹いた時代もあるなあ~  浜松学芸高校を中退してスクールで働き始めて5年目、通信高校の?年生だよ!  よろしくね!
オーナーへメッセージ
削除
【子ども育ちレスキューネットシンポジウム報告】 ③
    コメント(0)