さっさのドリフな毎日

岩手県矢巾町で、中学２年生がいじめ自殺をしてしまった。
また新たな犠牲者。
切なく悲しい。
でも、「いじめ」はこれからもなくならないでしょう。
私たちが、「いじめ」の根底にあるものが何か
気付かないかぎり。

平成１７年１月からこの５月まで
隔月で連載を担当した
読売新聞静岡県内版のコラム「まなざし」で
僕は何度も
「いじめ」の根底にあるものや
解決への道しるべとなることについて
書き続けました。

もしもヒントを見出して、
自分の子どもや
身の回りにいる子どもたちを
守れるきっかけになればと願って、
過去のコラムを順番に数回に分けて
いくつかご紹介します。

よろしかったらお読みください。

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「いじめの構図」
（読売新聞「まなざし」２００６年１１月掲載）


いじめ自殺に関する報道が続いている。

誰もが、
自らが正義であるかのように教員や教育委員会を批判し、
その一方で自殺の連鎖が歯止めなく広がっている。

２１年以上学校現場にいた僕は、
教員のおごりや学校教育の矛盾、欺瞞、
閉鎖性を実感している。
フリースクール開校後も、
不登校やいじめに対する学校の隠蔽体質や、
発達障がいに対する教師の無理解ぶりを
嫌というほど感じてきた。
しかし、悪いのは学校現場だけだろうか？

僕は２年前の「まなざし」で、
当時話題だった少年犯罪に関して
「私たちは教育の本質について問うことなく、
傍観者の一人となり、
ブームが過ぎれば忘れ去り、
新たな事件が繰り返されてゆく。」と記した。

１９９４年の大河内清輝君のいじめ自殺でも同じだった。
今回も、子ども達を取り囲む我々大人が、
自身の責任を問い直したり、
いじめの本質を語ったりすることはほとんどない。

私たちは誰もが心の中に暴力性や攻撃性を隠し持っている。
それが顔を出した時に、
いじめや争い、戦争が起こる。
そして、そのあらわれ方は
環境や雰囲気によって大きく左右される。

学校では、勉強でも運動でも、
優劣や強弱という物差しで比較をする。
それは、闘争心や粘り強さ、向上心を身につける半面、
強く優れたものの対極として
弱く劣ったものを作り出すというリスクもある。
そんな時に
「強ければいいわけじゃない」
「できなくてもいい」という弱者の視点と、
それぞれの特性や個性を
心から尊重し合う雰囲気があれば、
子どもたちの関係もゆったりとしたものになる。

しかし逆に、
教師も親も
「負けるな」
「強くなれ」
「良い成績をとれ」と
強者の視点であおり、
意識するかしないかに関わらず、
弱いもの、劣ったものを軽んじた言動を
取ってしまうことがある。
子ども達はそれを見習い、
上を目指し、下を見下す。
そしてそれが
心の奥にある暴力性や攻撃性に結びついた時、
いじめへとつながっていく。

どんなこともいじめのきっかけとなり得る。
自らの劣等感を隠し、
優越感を満たすためにいじめをし、
その加担をするのだから。
劣等感の強い子ほどいじめる側に回りやすいのだ。

教育再生会議のメンバーである陰山英男氏が
「最近の子ども達にはいじめに耐える力が弱い」
と発言していた。
よく聞く意見の一つだが、
まさに強者の側から見た言葉だ。
石原都知事の言う
「ファイティングスピリッツがなければ
どこへ行ってもいじめられる」
と同様、浅薄な意見である。

大人一人一人が
いじめの本質や教育のあり方を問い直し、
まず優劣や強弱という視点を捨てなければ、
いくらシステムやマニュアルを変えたとしても、
何の解決にもならない。